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2009年6月29日 (月)

すれ違い

散歩している先で「強欲」という言葉について一悶着起きている。
事の起こりは臓器移植法案。今回衆議院で可決された法案の内容について批判的な立場から、当該の法案を法制度の中に取り入れることを「強欲ではないのか」と問いかけた記事に対し、今まさに苦しんでいる生者を救済する道を広げるべきだという考え方から「それは言い過ぎだ」という批判が出ている(ように見える)。

「脳死 臓器移植 問題点」でググってみた。

論点を整理してみる。

・脳死臓器移植は基本的にドナーが存在しなければ成り立たない。ドナーの「死」を    前提とした医療術である。
・誰でもドナーとして適しているわけではない。若くて健康な者でなければドナーとして役に立たない。
・脳死診断を行う患者の前提条件は、1.器質的に脳が障害されている、2.深昏睡・無呼吸である、3.脳障害の原因が確実に診断されている、4.適切な治療をもってしても回復不能である、の4点である。
・「死亡判定」の基準は大きく言って二種類、三徴候と脳死…三徴候でも絶対に死ぬとは限らない。そのため、死亡宣告から火葬・埋葬までの時間が規定されているのである。ただし、三徴候死の段階で死亡宣告を受ければ、通常であれば(適切な救急救命措置を取らなければ)心臓も間もなく止まり脳への血流も停止するのである。
・脳死臓器移植先進国のアメリカにおいては、高額の医療費がかかるにもかかわらず、需要過大な状況にある。(彼の国には日本のような皆保険制度はない)
・救急救命医療も進歩しており、従来なら脳死状態に陥るような事例から回復するケースが増えてきた。
・従来なら臓器移植しか治療法がないと考えられてきた分野の病気でも、それに替わる治療法が出現しつつある。
・移植を受けた側も免疫抑制剤の終生投与を続けなければならない。
・一部の移植術においては、移植を受けた場合と受けなかった場合の予後に関する統計がきちんととれていない。

さて…と…
素人であるところの私が直観的に考えたことは、「脳死」という状態は「明らかに生きている」状態と、「明らかに死んでいる」という状態のグラデーションの中にあるグレーな部分ではないかということ、そして、その状態は日々変化しつつあるのではないかということである。
「日々変化しつつある」というのは、救急救命医療の進歩により従来ならば死者となるような事例でも回復する場合が増えつつあるということ、すなわち、「脳死」の基準が「明らかに死んでいる」状態に徐々に近づいていることである。
…ということは、臓器の提供は今後どんどん少なくなることが予想されるわけである。
「…だから、今法律により脳死臓器移植のドナーを増やすことを目指すべきだ」
というのは、論理の倒立だ。
むしろ、供給が先細ることが見えているからこそ、代替医療の研究・開発に努めることが求められているのではないか?…と、素人は考えるのである。

また、生と死のグラデーションの中に「法律」という形で線を引くことにも怖さを感じる。
少なくとも、ここ数日の報道からは、救急救命医療や代替医療の進歩を評価する声が聞こえてこない。
しかし…である。「法律で決まったことだから」ということを免罪符になってしまうのではなかろうか?
その免罪符が独り歩きし始めるのが怖いのである。
先に、臓器移植においては需要過大な状況にあることを述べた。このギャップを埋めるための法律であるとすれば、「脳死」の基準はどんどん「生」の方に動いて行ってしまうのではないか。そして、さらに恐ろしいのは、「臓器移植が当たり前(代替医療より手っ取り早い)」という意識が醸成されてしまうことである。いくら「脳死の基準」を「生」に近づけるといっても、一定の歯止めはかかるだろう。しかし、そこに「臓器移植さえすれば」という意識が働けば…「闇の子供たち 」の世界ではあるまいか?
この点に関する危機感を以て、脳死臓器移植法案の成立を「強欲」と表現するのならば、その危機感に同意するものである。

私の結論
A案は論外、百歩譲ってC案。
さらに、脳死臓器移植は緊急避難的医療行為であり、医学の本道に悖ることを明示するべきと考える。
また、付則でも何でもよいから、救急救命医療や代替医療の研究・開発への支援も盛り込まれるべきである。

おもな参照先
脳死・臓器移植の行方(関西医科大学大学院生命倫理学研究室)
臓器移植法改正問題に対する意見書(日本宗教連盟)
「インターネットで読み解く!」第8回「臓器移植法と脳死・移植の行方」
脳死臓器移植の問題
死体からの臓器摘出に麻酔?

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